接客業だって悪くない


noteに投げた記事と同じ内容ですが、一応こっちにも!

私の仕事の話。嬉しかった話。大変なこともあるけど、接客業も悪くないよ、って話。就活生とかは特に参考にしてもらったら。

 

入社以降、ずっと化粧品担当をやっています。年がバレるから、何年やってるかは書かないけど(笑)

志望動機に悩んで、入社面接でうっかり、「御社は近年化粧品販売に力を入れているということなので、化粧品販売をしたいです!」なんて、化粧品に興味も無いくせに言ったせいで、化粧品専門店に配属されて、痛い目を見てから早●年。

今ではすっかり、新しいメイクアイテムが出てると買ってしまったり、スキンケアのサンプルを片っ端から試すようになってしまいました。

今日はちょっと、そんな私の仕事の中身について書こうと思います。

私自身の業務は主に化粧品販売なので、世間的に言う「小売業」であり、接客業やサービス業と言ったりもする仕事です。

こう書くと、なかなか悪名高い職業の印象があると思います。なので、結構いいところもあるんだよ、という話をしようと思います。

 

入社直後の私は、化粧に関してまったくのド素人でした。

敏感肌でも乾燥肌でもなかったので特別な肌悩みも無く、週一でやるかやらないかのスキンケアに、肌色に合ってない塗ってるだけのファンデで、ドヤ顔してました。化粧品専門店のスタッフがですよ。思い出すだけで、顔から火が出そうです。

さて、そういうわけで、商品の知識も無い、接客の技術も無い新入社員の私が最初に割り振られたのは、日焼け止めとハンドクリームのタッチアップでした。

タッチアップというのは、お客様の手などに直接化粧品を塗って差し上げることです。商品を買って帰られるお客様や、通りがかったお客様に、お声をかけて、春夏は日焼け止め、秋冬はハンドクリームを塗らせて頂いて、商品の紹介をして、チラシを渡すという業務をしていました。ポケットティッシュ配りみたいなものです。

新入社員の洗礼みたいなもので、こういうことをして、お客様への声掛けのタイミングやコツ、上手い商品説明の仕方、みたいなものを学んでいくという修行の一環ですね。ついでに、お客様が興味を持ってくれたり、後日再来店してくださったら、しめたもの。

私は他の業務がほとんどなかったので、これのお蔭で、タッチアップや商品説明が割と得意になりました。未だに、お客様の個人的なお悩みに合わせた接客をするより、一方的に商品について喋って紹介するだけの方が好きです。褒められたことじゃないけど!

 

このタッチアップについて、忘れられないことがあります。

他の業務をしていた、秋のことです。さすがに秋ごろになると、役立たずの新入社員の私でもできる業務を割り振ってもらっていて、いっつもかっつもタッチアップをしていたわけではなかったんです。

ベビーカーを押した女性が、たまたま店の前を通っていかれました。

何でその女性が目に留まったのかはまったく思い出せませんが、とにかくベビーカーを押す両手が、あかぎれで酷い状態だったんです。

皮膚はめくれ、擦り切れて、痛々しい赤い肉が露出していて、血が滲んでいる箇所もあったくらいです。

寒くなり始めた頃だから、皮膚の弱い方はたまにそういう風になってるんですが、ベビーカーを押していらっしゃったので、ピンときました。

赤ちゃんが舐めたらいけないから、このお母さんは手に何も付けられないんだ。

気付いたら、ポケットからハンドクリームを取り出しながら、「待ってください!」って声をかけていました。

驚いているお母さんに、「ハンドクリームを塗らせてください」とお願いしました。

このクリーム、口に入っても安全なクリームなんです。大人もですけど、赤ちゃんが舐めても大丈夫なものです。赤ちゃんの口に入っても、お肌についても大丈夫な、安全なクリームだから、赤ちゃん抱く前に塗っても平気ですよ。ついでに、めちゃめちゃ水に強いです。だから、炊事の前に使ってもらって、食材についたって、お皿についたって大丈夫だし、少々の水道水じゃ落ちませんから、安心してください!

面食らっているお母さんに了承をもらって、その手にハンドクリームを塗らせてもらいました。一応、血が出てしまっているところは避けました。

お水じゃ流れないクリームだから、長持ちします。さすがに石鹸で洗ったら落ちますから、お夕飯の支度とか、赤ちゃんのお世話とか、お風呂入るまでの間に、少し気にしててみてください。

お母さんはクリームについて何の文句も感想も残さず、「ありがとうございます」と言って、去っていかれました。

反応が薄かったので、押しつけがましいことをしたかな、お節介だったかな、あかぎれの手を触られるのは嫌だったかもしれない、としばらくの間悩んだものです。

 

さて、そんなことすっかり忘れた数か月後のこと。もう冬も終わりかけでした。私もそこそこの働きをするようになってきて、代わり映えのしない業務に取り組んでいました。

お腹も膨れた昼下がり、まあちょっとぼんやりと眠さを感じながらレジ付近にいたときです。お客様に「レジお願いします」と声をかけられました。

慌てて背筋を伸ばして、「ありがとうございます」と受け取った商品は、よくタッチアップをするハンドクリームでした。

安価なものではありません。一見さんが買っていくような値段ではないからこそ、タッチアップをしていた面もあります。

これを接客もされずに持ってくるなんて(※スタッフが接客した場合は、大体スタッフがレジまで商品を持って、お客様をご案内してくる店だったんです)、さぞや金持ちなんだろうな。セレブの方の顔を拝んでおこう、なんて下世話なことを考えながら、お姿を確認した記憶があります。

そこには、見たことのあるベビーカー。どこかで会ったことあるような女性が立っていました。

この人どこで会ったんだっけ、スタッフの誰かの上お得意様だったらお名前思い出せないのまずいな、まさか本部の上司ではなかったはずだけど、うーんうーん。

私の一瞬の絶句をどう受け取ったのかわかりませんが、女性はお財布を出して支払いの準備を始めました。私は慌ててレジを打って、金額を伝えて、精算を済ませました。

女性はハンドクリームとお財布をキレイな手で鞄にしまってから、私に声をかけてくれました。

「前に、ハンドクリームを塗ってもらった者です。家に帰ってから、感動してすぐ買いに来て、何度か買い足しに来たんですけど、お会いできなくて……。ずっとお礼を言いたかったんです、ありがとうございます。お蔭様で、手が痛くないんです」

そう言ってベビーカーを押す手は、すっかりキレイになっていました。

めくれた皮膚も、むき出しになっていた赤い肉も、滲んでいた血も、見る影もなくなっていました。

家に帰ってから、泣きました。

良かった、そうか、手が痛くなくなったんだ。良かった。

 

正直な話、私は売上を伸ばすことに積極的な販売員ではありません。

商品を買ってもらうことより、商品の紹介をすることの方が楽しいと感じる販売員です。販売員としては、褒められたものではありません。

その女性にハンドクリームを塗ったのだって、決して「うちにこのハンドクリームを買いに来てくれないかな」という思惑でしたわけではなく、「赤ちゃんが舐めても大丈夫なハンドクリームも世の中にはあるから、お母さんが健康や美容を諦めなくてもいいって知ってほしい」という気持ちでした。

別に、お客様のお悩みに寄り添えば顧客になってもらえるとか、良い心遣いをすれば感動してもらえるとか、そんな大それた話をしたいわけではありません。

ただ単純に、私がやったことで、喜んで、名前も知らない販売員に「ありがとう」を言いにきてくれる人がいることが、何よりも嬉しかったんです。

私の仕事が報われた、私のやったことが評価された!

達成感と、満足感と、人から感謝された自己肯定感。

こうやって言ってしまえばド直球だけど、売上や利益を上げることより、「ありがとう」をもらえる方が、私にとっては楽しくて嬉しいことだってことです。

 

小売業の販売員や、サービス業のスタッフは、他の多くの職種と同じように、色んな労働問題を抱えています。

常態化する長時間労働や、インターバル問題。人員不足によるワンオペ、何でもかんでも文句を言うクレーマー問題とか。

そういう問題が、ネットのデマだとは言いません。改善していかなきゃならない問題ばっかりです。

ブラックバイトの典型広告みたいに、「ありがとう」をもらえることこそが至上の報酬とは思いません。さすがに、金がないと人間は食っていけない。

だけど、小売業やサービス業が、ただただ劣悪な業種だと言われると、さすがに首を傾げます。

商品を厳選して、陳列を工夫して、お客様の需要を上手く汲んで、売上や利益を上げるのが好きな人。

私のように、お客様のお悩みを想像して、あれこれ世話を焼いて、その人に認められるのが嬉しい人。

そういう人には、すごく向いている業種です。

悪い噂ばかり出回りやすい職種だけど、こんな面もあるんだなと覚えていてもらえれば、嬉しいです。就活生は、業界研究の一環として、頭の片隅にでも残しておいてください。

 

そして良かったら、日常でのお買い物の一コマで、感じの良い店員さんに巡り会えたら、一言「ありがとう」と声をかけてもらえたら嬉しいです。

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